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悲しくも美しい恋の物語(番外編)【第五話】

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①悲しくも美しい恋の物語
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仕事終わり家に帰りついた麻衣。早速青山から渡されたメモを取り出し見つめメモをもらったことがなかったので、正直なところ「ドキッ」としてしまった麻本でした。
ただ、麻衣は赤城のことを今でも愛しています。ひとときも忘れたことはありません。もちろん赤城以外の男性と付き合うことなど考えることもできませんでした。

しかし、昼間の青山との会話を思い出し、またも「クスッ」と思い出し笑いをしてしまう麻衣でした。麻衣はこんなに自然に笑うことが出来たのは、本当にどのくらい前のことだっただろうかとしみじみ思うのでした。

赤城の研修留学に決まった後からは、本当にいろんなことがあったので、赤城が渡米してからというもの、こんなふうに自然に笑った記憶は全くなかったなと感じていました。そしてしばらく考えた麻衣は、なんとなく感覚的に感じていました。少し元気をくれた青山ともう一度話をしてみたい。これは正直な気持ちだったのでした。

ちょっと緊張しながらも麻衣は電話をしてみました。コールが3回、4回⋯。「はい
青山です。」青山がでました。「大川です。」⋯⋯しばらく無言が続きましたが、明らかに青山が驚いているのは電話口からでも分かります。そして青山から話を切り出します。まずは電話をしてくれたことに対するお礼言葉からでした。

青山は、インフルエンザにかかっていたため、薬を飲んで休んでいるところでした。
まだ本調子でなかったと思う一方で、意外に元気に話をしています。というよりも、元気になってしまったというのが正解なのかもしれません。

「大川さん!自分たちの職場も近いから、今度仕事が終わったら食事に行きましょう!お
酒もいけますか?私のおススメのお店が西口にあるんです。どうですか?」青山からの申し
出に、麻衣は二つ返事でOKするのでした。

麻衣は、本当に久しぶりに男性と二人で食事をします。男性と待ち合わせするのも久しぶりで、それなりに緊張していました。蒲田駅西口の改札前で待ち合わせ。改札前に到着するや否や、先に到着していた青山から声をかけられました。

そのまま簡単に挨拶をするも青山に先導されて、西口にあるイタリアン系の居酒屋へ行くのでした。青山は相当嬉しかったのかテンションが高いようで、麻衣もこんなに喜んでもらえると正直なところ嬉しい気分でした。

店に入り、店員に案内されて席につくと、まずドリンクのオーダーです。青山は生ビールの大ジョッキを、麻衣はカシスオレンジを注文しました。ドリンクを待っている間に、青山から、「今日はありがとう!楽しみにしていました!」と満面の笑みで言われます。麻衣からは特に何も言いませんでしたが、自分でも間違いなく笑顔になっていることは自覚できました。

さらに青山から「何を注文しましょうか?私のおススメは、サラダピザなんです!麻衣さん
好きなもの注文していただいてオッケーですよ!」麻衣からは、「はじめてのお店なので、お任せしますね」と応じました。その後青山からいくつかの候補を挙げられ、そのまま注文となりました。

「今日も一日お疲れさまでした〜カンパーイ」店員さんの大きな発声!二人はお酒を飲み
はじめます。麻衣はとりあえずカシスオレンジを、青山は大ジョッキの生ビールをそれぞれ飲みました。青山はほとんど一気飲みかのごとく、飲み干してしまうのではないかという勢いで飲んでます。(そういえば、赤城さんも生ビール良く飲んでいたな⋯⋯)ふと思う麻衣でした。

お酒が進みどんどん楽しくなっていく麻衣。そんな時に青山がインフルエンザにかかったときの話をし始めました。「こんな短期間に3回もインフルにかかるなんて、はじめてなんですよ。信じられないです。結構インフルにはかからなかった方だと思っているのですが、今回はヤバかったです。」

麻衣は言います。「そうね、短期間にインフルに2回かかる方もいますけど、3回聞いたことはありませんね。」すると青山は、「院長先生なんて3回目の受診したとき、こんな感じで考え込んで、首を何度も横に振っていたんですよ。」といい、院長がその時にやっていたであろう仕草のマネをしてみました。

すると麻衣は、その首を傾げる仕草や、いかにも橋本院長がやりそうなしかめっ面の表情が本当にそっくりであったため、思わず大爆笑してしまったのです。あまりにも笑いすぎて、麻衣は何年振りか、悲しみ以外の理由で涙を浮かべるのでした。

麻衣は本当に楽しい時間を過ごしました。青山と過ごす時間は、あの赤城を失った一瞬でも忘れることが出来ないはずの悲しみでさえ、忘れせる力を持っているようです。麻衣は、一瞬でもこの苦しく悲しい思い出を忘れせてくれる青山に対し、心の中でお礼を言うのでした。

6話に続く

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