悲しくも美しい恋の物語(番外編)【第六話】

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①悲しくも美しい恋の物語

麻衣は、青山からの電話が楽しみになりました。 青山は本当に面白く、この人って話のネタいつになったら尽きるのかしら?と思うほど、いろんな話をしてくれます。 電話がない日は少し寂しいのですが、その時は決まって青山は友人と夜飲みに行っているパターンであることはだいたい分かってきました。

前回青山と食事に行ってから 1 週間も経たないうちに、 青山からまた誘いがありました。
もちろん麻衣は二つ返事で了解します。 そしていつの間にか青山と会う日を楽しみにしている自分がいることに麻衣は気づきはじめていました。

前回と同じ蒲田駅西口の改札前で待ち合わせです。改札前に到着するや否や、 やはり先に到着していた青山から声をかけられました。振り向いた麻衣を見た青山は、時間が数秒止まりました。そうです。 今回の麻衣は、いつもよりも念入りにドレスアップしてきました。

時が動き出した青山からは、「麻衣さん、 前回も締麗でしたけど、 今日は一段と! えっと気合入ってますね!」 とそのままストレートに言葉に現れました。 いつも通りテンションが高い青山を見て、ちょっとうれしい自分がいること自覚する麻衣でした。

さて、青山いち押しのイタリアン系居酒屋に到着しました。 店員に案内され、今回はカウンター席で二人横に並んで食事です。前回同様に店員が「今日も一日お疲れさまでした!カンパーイ!」元気よく発声し、 二人はジョッキとグラスを「コン」と合わせて、 お酒を飲み始めます。麻衣は今日の青山との食事をことのほか楽しみにしていました。

お酒も食事もどんどん進み、気分が良くなっている二人です。 麻衣から今日病院であったことを話し始めました。「今日来られた患者さんで、凄い方がいたの。」 青山は、ジョッキを置き、麻衣の話す言葉に真剣に耳を傾けるのでした。

「その患者さん、どのくらいお風呂に入っていなかったのか分からないくらいの方で、もうびっくりするくらい南京虫(シラミ)が凄かったの。」話を聞いた青山は、すこ~しだけ麻衣から離れました。 そして麻衣は少し興奮気味に話を続けます。

「診察を終えてお帰りになった後、 もう病院中消毒して、てんやわんやの大騒ぎで大変だったの。」すると青山は、またまたすこ~しだけ麻衣から離れました。 ちょうど二人の間に、一人が座れるくらいのスペースが出来上がりました。

青山が少しずつ離れていっていることに気付いた麻衣は、 青山の左の袖をひっぱり半分叫びながら弁解のように言います。 「あ~~!ひど~い!!ちゃんと消毒しましたよ~」と青山を引き戻しました。 そして青山の左腕をしっかりと抱きしめていたのでした。

青山は、「ごめんごめん!もしかしたら、 南京虫がうつっちゃうかもと思ってさ」 というと更に麻衣はきつく青山の左腕をしっかりと抱きしめて、「大丈夫。 医療機関なんだからちゃんと消毒したもん」と訴えます。 青山にからかわれていることも知らずに・・・・・・。

青山はこんどこそ本気で謝ります。「麻衣さんごめんね。 うそうそ。 ちゃんと信じてますよ。さあ飲みなおしましょう!」 そう言ってジョッキを麻衣のグラスに「コン」と鳴らして生ビールを飲み干すのでした。

麻衣は少し落ち着き、 自分が青山にしがみついていることに気付きます。 我に返り青山の腕を離して、カシスオレンジをぐっと飲み干す麻衣でした。 でも麻衣は気付かないうちに、青山と共有している時間がとても自然なものであることを実感しています。 そんな時青山から思いがけない申し出がありました。

「麻衣さん、お芝居見ますか?私はお芝居を見るのが大好きで、来月早々に見に行こうと思っているんですよ。 良かったらどうかなと思って。」麻衣はお芝居を直に見に行ったことはなかったのですが、TVでは何度も見ています。

青山は、「キャラメルボックスって知っていますか?マイナーな劇団かもしれないけど、 私は好きなんですよね。」麻衣は迷わず「都合が合えば是非」と答えました。青山は嬉しそうな顔をして、「ではチケット取れましたら連絡しますね。 土日の公演を考えていますけど、大丈夫ですか?」 麻衣は静かにうなずくのでした。

7話につづく

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