悲しくも美しい恋の物語(番外編)【最終話】

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①悲しくも美しい恋の物語

青山との食事を終え、麻衣は自宅に戻りました。 「本当に楽しかった~」 麻衣はベッドにそのまま倒れ込みました。 「お芝居か。 楽しみだな。」 そんな時でした。 突然電話が鳴りました。取ってみると、母親からの電話でした。

「麻衣。赤城さんの法事の連絡が入ったの。 あなたどうするの?・・・・お母さん思うんだけど、 あなたもまだ若いんだから、遠慮してもいいのじゃないかしら。 まだ先だけど、 一応伝えておくわね。」麻衣は母からの連絡を受けて、 急に現実に引き戻されました。

「そうだ。私は婚約者がいたんだ。今はいなくても私は今でも赤城さんのことを愛しているんだ。」そして麻衣は考えました。 こんなにも早く赤城のことを忘れていいのだろうか。 そしてこんな気持ちでこのまま青山と会い続けていいのだろうか。 麻衣は深く深く悩むのでした。

そうこうしているうちに数日が経ち、いよいよ今日が青山との約束の日です。 麻衣は昨日あまり眠れませんでした。 そして今日青山と会うべきか会わぬべきかまだ結論が出ません。 そうこうしているうちに、 出かけなければならない時間が来ました。もう出かけないと、待ち合わせ時間に遅刻してしまいます。

麻衣はようやく一つの答えを出しました。 とにかくもう一度青山に会わなければならない。そしてまずは青山と会うために、急いで出かける準備をするのでした。今日の待ち合わせは、新宿アルタ前。このままだと予定よりも 20分ちょっと遅刻しそうです。

待ち合わせ時間を10分過ぎたころ、 青山から電話が入りましたがちょうど電車の中であったので、電話に出ることができませんでした。ちょっと申し訳ない気持ちがありましたが、麻衣は急いで待ち合わせ場所に行きます。


ようやく新宿アルタ前が目の前に見えたとき、青山から電話が入りました。そして電話に出ながら、青山の目の前に立ちます。「遅れてごめんなさい。」 青山は少し不安そうな顔をしていたみたいですが、麻衣の顔を見た途端安塔の笑みを浮かべました。

「麻衣さん、ちょっと心配してしまったよ!でも良かった無事に来てくれて。お芝居の時間が迫っているから、急ごうか!」麻衣はそんな気にかけてくれる青山のやさしさに少し心が痛かったのでした。

麻衣はお芝居の最中も考えていました。お芝居は思いのほか楽しかったものの、今後の青山との付き合いをどうすればいいのか考えがまとまらない麻衣でした。そしてお芝居が終わり外に出たとき、 青山が満面の笑みを浮かべて麻衣に話しかけます。 「感動したね!やっぱりお芝居は最高だな~」麻衣は一瞬どう答えていいか分かりませんでした。

場所を変え、 青山と食事をしています。 いつも通り青山は楽しく、 麻衣を気遣ってくれていることも良く分かりました。 麻衣は本当に優しくて楽しくてそして気遣いができる青山に対し、自分でもはっきり好感を持っていることを自覚しました。そして麻衣はとうとう答えを出したのです。

(こんなに素敵な青山さん。 もうこれ以上自分と関わらせるわけには行かない。)

食事を終え、21時を過ぎたところです。 青山と一緒に駅に向かって歩いているところです。
不意に麻衣から青山に対して、 「喫茶店で少しお茶を飲みませんか?」と言いました。 青山は一瞬怪訝そうな顔をしましたが、承諾し目の前にあった喫茶店に入ったのでした。

二人とも席について紅茶を頼みました。 麻衣はなかなか話を切り出せません。 青山の表情もだんだん曇ってきました。麻衣は自分の表情が今にも泣きだしそうになっているだろうと自分でも分かっていました。そしてとうとう麻衣は話を切り出します。

「ごめんなさい。本当はもっと早く話さなきゃと思っていたんだけど、 実は私、婚約を破棄したばかりなんです。 結婚直前で式場もキャンセルして ・・・・」 麻衣はそのまま続けます。

「本当はもう男性とお付き合いするつもりはなかったのですが、お手紙をいただいてつい連絡をしてしまって。 そしていけないとは思ったのだけれども、 青山さんとお会いしていると本当に楽しくて。ついつい今までお会いしてしまいました。 でももうこれ以上青山さんとお会いすることはできません。ごめんなさい。」

青山はしばらく時が止まったかのようにまさに止まっています。 麻衣はきっとショックを受けているんだと思うと、 涙が出てきてしまいました。 そして青山の方から声を振り絞るかのように出た言葉が、「実は次のお芝居のチケットも取ってあるんだ。 もし気が向いたら 10月10日 18時開演なんだけど、今日と同じ場所で待ち合わせしませんか・・・」

きっとこれは青山が今日別れ際に言おうと思っていた言葉だったのかもしれません。麻衣は涙が止まらなくなりました。 そしてやっとの思いで言えた言葉は「ありがとう。 でも多分行けないと思う。」 そのまま二人はしばらくの間無言になりました。

麻衣はその後どのように青山と別れたのか覚えていません。 きっと青山もそうだと思います。そして自宅に戻った麻衣は、 一晩中泣いたのでした。赤城に続いて青山も失ってしまったような喪失感が麻衣の心を覆ったのです。

数日後麻衣に手紙が届きました。 しかしこの手紙には切手が貼ってありません。 恐らく青山が直接手紙を持ってきて、 クリニックの郵便受けに投かんしたのだと麻衣は思いました。そして麻衣は青山からの手紙をなかなか読むことが出来ませんでした。

手紙を開くことができないまま 1 日が経ちました。やはりどんなことが書いてあるのかきちんと読まなければいけないと思い、麻衣は思い切って手紙を開封し、 読みました。

 大川 麻衣 様

 拝啓 何からお話ししていいか正直分かりませんでした。 ですがきちんと自分の思いはお伝えしたいと考え、この手紙を書きました。
 まずは、麻衣さんがこんなにも心が傷ついていたにもかかわらず、 何度もお電話を差し上げ、何度もお誘いして申し訳ありませんでした。 きっと私には想像できないほど苦しんでいらしたと思います。 そんな中、 もしも少しでも楽しんでいただけたのなら、 私もとても嬉しいです。
 麻衣さんから最後に伺ったお話。とてもショックでした。 ですが、あえて申し上げます。 まだ3回しかお会いしていませんが、私は何度も何度も麻衣さんとお会いしたいと心の底から思っています。
ですが麻衣さんにこのことを伝えること自体がさらに苦しめてしまうのではないかととても悩みましたが、私の1回だけの勝手をお許しください。
 麻衣さんの心が落ち着いたら連絡をください。 もし連絡がなかったなら、お芝居を見に行ったあの日の1年後、 新宿のアルタ前に 18時に待っています。 いらっしゃなければ、 もう麻衣さんにご連絡するようなことはいたしません。
 どうか麻衣さんの心が癒されますよう心の底から祈っています。              

                                          青山

麻衣はその手紙を読み終えると、 最後に自分で書き足しました。

青山さん本当にありがとう私に元気をくれて  あなたの優しさ決して忘れません

                                        (おわり)

【あとがき】

 これの物語は、私の最も大切な恋の思い出でから引用しています。登場人物の麻衣さん(仮名)とたった3回しかデートをしていませんが、とても美しい思い出です。

 私の想像で、麻衣さんの美しくも悲しい悲恋をフィクションとして描いてみました。麻衣さんはとっても素敵な女性でしたので、今ではきっと幸せな人生を送ってくれていると信じています。

 最後に麻衣さんへ。とっても大切な思い出を下さってありがとう。当時本当に辛かったであろう麻衣さんに少しでも元気を分けてあげることができていれば、私は本当に幸せです。

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